2016年9月7日

ひらくだけで母性をかきたてられる?!アート・ブック3選

【母性】とは、不思議なことばではないでしょうか?

イメージとしては、【やさしさ】と似ていますが、もっともっとピュアで、手つかずの包容力がある、そんなイメージがありませんか?

抽象的でありながら、本能的に誰もが持ち合わせている母性に訴えかける、アートブックを厳選しました。

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『聞耳の森』土屋仁応 求龍堂

はじめに紹介するのは、山羊や羊、象やきりんなど、草食動物が中心の木彫りの作品集です。

樟(くすのき)に彩色をほどこした彫刻は、木の持つ素朴な手触りと、動物たちの愛くるしさが、まっすぐに伝わってきます。
なめらかな質感。華奢でしなやかな身体つき。そして、水晶を埋め込まれた目もとは、ほんのり紅く染められ、何ともいえない色っぽさが感じられます。

作者の土屋仁応(つちや よしまさ)は、1977年生まれの若い木彫り家。
東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業した後、同大学院にすすみ、仏像の修復を学びました。

たしかな技術力にくわえて、生命の持つおごそかさや、時間感覚は、数々の文化財から影響を受けたものなのでしょうか。
観世音菩薩さながらのおおらかさと、生まれたての赤ちゃんのような、決して傷つけてはいけない! という儚さが共存しているところがまた魅力的です。

聞耳の森』というタイトルの通り、森のなかで耳を澄ましているような静けさに癒されます。

『みち』阿部海太 リトルモア

少年と少女がどこまでも、どこまでも歩いていきます。草原や海辺、砂漠など、まっすぐな道を歩いて、あるいて、1度だけ走って、ふたたび歩き続けて旅をする、たったそれだけの絵本ですが、視界が広くクリアになったような錯覚を受けます。

二次元にもかわらず、奥行きや立体感が感じられ、地球のまるさや、宇宙の広大さが伝わってきました。
大自然をかけめぐるアートブックですが、母の子宮のなかに戻ったような安心感があり、そういう意味で、とても【母性】にあふれた本ではないでしょうか。

1986年埼玉県生まれの阿部海太は、東京藝術大学美術学部デザイン科を卒業後、ドイツやメキシコに渡り製作を続けます。
数年前に帰国してからは、展示会をひらいたり、絵本を出版するなど、幅広く活動しています。

『むく鳥のゆめ』 作・浜田広介 絵・網中いづる 集英社

泣いた赤鬼」「竜の目の涙」などの児童書で知られる浜田広介。明治に生まれ、昭和48年に没するまで、たくさんの童話を遺しました。
彼の作品のなかで、母性をかきたてられるお話というと、まっさきにおもいだすのは、この「むく鳥のゆめ」です。

ひな鳥は父さん鳥から、「お母さんは、遠くに行っている」と聞かされています。本当は母鳥は死んでしまったのですが、父は、あくまで子どもの気持ちを考えて本当のことを言いません。
ある風の夜、栗の木にたった1枚残った枯葉がたてる音が、ひなにとっては、まるで母の羽音のように感じられ、いとおしくなり、ついにその枯葉を馬の尾の毛で木に結び付けてしまいました。その晩、むくどりの子は、とても素敵な夢を見ます。

まるで、父子家庭のモデルのようなストーリーは、さまざまな画家が絵を描き、絵本になっっていますが、網中いづるさんの挿絵は、淡い色調をいかした幻想的な雰囲気です。

いかがでしょうか?
母性をかきたてられるアートブックは、雄大な自然や、生命のおごそかさが、過不足なく表現されています。

なお、土屋仁応さんの木彫り作品は、東京都美術館で開催中の「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」(10月2日まで)で、実物を見ることができます。
ぜひ、おでかけくださいませ。

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この記事を書いた人

有朋さやか

有朋さやか

新聞や雑誌の読者投稿を経て、ライターに転向。現在は、短歌を紹介するエッセイや、地球環境にまつわるコラムを、多数のメディアに寄稿しています。1982年生まれ。岡山県在住。

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